千寿桜―宗久シリーズ2―
源三郎自身、何を言われても相手にはしないだろう。
穏やかに笑い、飄々と交わすに違いない。





源三郎とは、そういう男だ。


武術に長けているだけが男らしさでは無い。


源三郎を見ていると、そう思う。











「生きて戻りたいのならば先手を打つ事。敵も命懸けだ、お前達の力量に合わせてくれる余裕は無いぞ?相手の動きを見極め、押す。まぁ、女と同じだな」



………同じか?




笑いが湧く中で、俺は思わず眉をひそめる。




「自分に気があるか、見極めなければ女を口説けないからなぁ。大体は、自分を見る目付きで分かるぞ?」






源三郎に、この女癖さえ無ければ……。









「やはり……師範はさすがです」


貞吉が、感嘆からか溜息を漏らしていた。







貞吉は、源三郎に憧れを抱いている。


それを言えば、源三郎に学びに来る者が皆そうなのであろう。





「貞吉。剣術と女、どちらがすごいと言うのだ?」

「どちらもです、若様」

「………そうか」





この純粋で、未だ汚れを知らぬ貞吉が、源三郎の悪い癖に巻き込まれなければ良いが。
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