千寿桜―宗久シリーズ2―
「師範!次は私と手合わせをお願いします!」
「おお、威勢がいいな。貞吉」
意気揚々と竹刀を手に、立ち上がる貞吉。
素直で懸命なのが、貞吉の良い所だ。
だからこそ俺は祈る。
貞吉……女との手合わせは、源三郎にだけは頼まぬ方が良いぞ?
朝稽古が終わり、俺と源三郎は汗を流す為に、馬場脇の井戸へと向かった。
早朝といえど既に陽は高く、肌を焦がす熱が肌へと染み込む。
手をかざし、仰いだ陽の光は、直視できないにも関わらず、容赦無く目を刺激してくる。
暑いと言うよりも痛い。
「夕立でも来ませんかねぇ」
源三郎が、井戸に放り込んだ釣り桶を手繰りながら、うんざりした様にぼやく。
「年寄りには暑さが身体に堪えますよ」
「何が年寄りだ。都合の良い時ばかり年寄りぶるのだな」
「あはは」
ごまかしているのか源三郎は笑い、引き上げた桶を地面へと置く。
桶の中の水は、見ているだけで、頭から浴びろと誘惑しているかの様に、涼やかに揺らめいている。
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「おお、威勢がいいな。貞吉」
意気揚々と竹刀を手に、立ち上がる貞吉。
素直で懸命なのが、貞吉の良い所だ。
だからこそ俺は祈る。
貞吉……女との手合わせは、源三郎にだけは頼まぬ方が良いぞ?
朝稽古が終わり、俺と源三郎は汗を流す為に、馬場脇の井戸へと向かった。
早朝といえど既に陽は高く、肌を焦がす熱が肌へと染み込む。
手をかざし、仰いだ陽の光は、直視できないにも関わらず、容赦無く目を刺激してくる。
暑いと言うよりも痛い。
「夕立でも来ませんかねぇ」
源三郎が、井戸に放り込んだ釣り桶を手繰りながら、うんざりした様にぼやく。
「年寄りには暑さが身体に堪えますよ」
「何が年寄りだ。都合の良い時ばかり年寄りぶるのだな」
「あはは」
ごまかしているのか源三郎は笑い、引き上げた桶を地面へと置く。
桶の中の水は、見ているだけで、頭から浴びろと誘惑しているかの様に、涼やかに揺らめいている。
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