千寿桜―宗久シリーズ2―
「後で瓜でも冷やしておきますか」

「それは良いな」

「では後で、芳(よし)の所に顔を出して、瓜をくすねて参ります」

「芳?最近、屋敷の調理場に上がった娘の事か?」





俺の言葉に、なぜか源三郎は嬉しそうに、ふふ…と小さく声を上げて笑う。




嫌な感じだが……まさか……。








「芳はかわいいですよ〜?歳は十七で、初々しい。相性も良いです」






やはり………。






既に手を付けた後か?


芳が来てから、まだ半月も経ってはいないと言うのに……何て動きの早い。



あまりに早過ぎる……忠告すら間に合わないとは。






「どうしました?保明様。大口をお開けになって」



開いた口が塞がらないのだ。







そんな俺の心中等介せず、鼻歌を歌いながら汗を含んだ着物を袖から外す源三郎。




わからん……俺にはさっぱりわからん。






いや、考えても仕方が無い。

開いた口が塞がらない事等、今まで幾度と無くあったではないか。





本当に、なぜ女は源三郎が良いのか。


明らかに、浮気性が人の形を得ているだけではないか?



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