千寿桜―宗久シリーズ2―
「ですが、戦を重ねていく内に、その感覚は薄れていくのですよ。慣れてしまうのでしょうか…敵を斬る事に、罪悪も何も感じないのですよ。
殺した敵にも、帰りを待つ者がおり、無事を祈っているだろう現実さえも………何も感じないのです。
殺さなければ殺される……敵を斬る事で、己の生を確認するかの様に」









………俺は、まだ戦の経験は無い。


源三郎の生々しい語りを聞いても、状況は理解できない。






ただ敵を斬り、斬る事で己の生を確認する。



その様な方法でしか生を確認できない、戦という生死の間を、俺は知らないのだ。





そういう面では、源三郎は経験が豊富になるのだろう。


だが、経験と言う枠にはめる事柄では無いと、俺は感じていた。






人が、死んでいくのだから。



経験では無く、体感だ。


それも、過酷な……。




源三郎は、その行為を悔いていると感じる。


空を見上げる瞳は、端正な横顔は、その行為の中に在る己の無情さを確認しているかの様だからだ。






「源三郎」

「はい」

「その、お前を斬った少年は……どうなったのだ」




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