千寿桜―宗久シリーズ2―
正面に立つ源三郎を見つめた。



その姿は穏やかで、今、耳にした言葉は本当にこの男の声からだったのか……受け入れていいものかという疑問さえ浮かぶ。









「それが戦なのですよ、保明様。私は、たとえ震える者でも、相手が戦で交える武士ならば、年端がいかずとも斬りますよ」

「お前も…武士だからか?」



源三郎は、頷きを返す。





「ですから私はいつも言っているでしょう?戦を起こさずにこの地を守りたい……そんな保明様の甘っちょろい戯れ事が好きだと」






瞳を細め、笑う源三郎。


張り詰めていた糸が緩む様に、緩く力を抜いていく源三郎の男らしい美貌。




だがその表情は儚く弱々しく、なぜか不安に怯える赤子を連想させた。





救いを求める様な眼差し……。









ああ………そうか。


そうなのだな?



源三郎、お前は人を斬る事を望んではいないのだな。


言葉では伝わらない、源三郎の心が眼差しに含まれている。






大切な者を失う苦しみを知る者が、どうして心から人の命を奪う事ができるだろう。






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