千寿桜―宗久シリーズ2―
道を登りきった頃には、うっすらと背中に汗をかいていた。
僕が出た場所は、本当に裏だった。
目の前に建つのは、おそらく神社の社(やしろ)の後ろ。
湿り気を帯びた固い土を踏み締め、社の正面へと回る。
「…………!」
正面へと抜けた僕は、飛び込んできた光景に、思わず息を詰まらせた。
そこにあったのは、巨大な桜の木。
太い幹、空を覆い隠す様に広がる枝、そしてその枝がしなる程に咲き乱れている、桃色の桜の花。
燃える様に咲く桜の花。
神社の境内の隅にあるにも関わらず、周りに咲く春の花の美しさをかすませる桜は、悠々とその色を空間に浮き上がらせている。
そこだけが違う空間ではないのか、幻ではないのかと感じる程、目を疑うくらいの美しい景色。
神々しい………そんな言葉が浮かんだ。
「すごい………」
やっと出た感想はそれだけ。
自分のボキャブラリーの貧困さを悔やむ余裕すら無い。
意識が、光景に吸い寄せられる感覚。
これが、千寿桜……。
.
僕が出た場所は、本当に裏だった。
目の前に建つのは、おそらく神社の社(やしろ)の後ろ。
湿り気を帯びた固い土を踏み締め、社の正面へと回る。
「…………!」
正面へと抜けた僕は、飛び込んできた光景に、思わず息を詰まらせた。
そこにあったのは、巨大な桜の木。
太い幹、空を覆い隠す様に広がる枝、そしてその枝がしなる程に咲き乱れている、桃色の桜の花。
燃える様に咲く桜の花。
神社の境内の隅にあるにも関わらず、周りに咲く春の花の美しさをかすませる桜は、悠々とその色を空間に浮き上がらせている。
そこだけが違う空間ではないのか、幻ではないのかと感じる程、目を疑うくらいの美しい景色。
神々しい………そんな言葉が浮かんだ。
「すごい………」
やっと出た感想はそれだけ。
自分のボキャブラリーの貧困さを悔やむ余裕すら無い。
意識が、光景に吸い寄せられる感覚。
これが、千寿桜……。
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