千寿桜―宗久シリーズ2―
雰囲気、とは違う。


もっと奥の、手が届きそうで届かない、思い出せそうで思い出せない。




もどかしさの様な気持ち。









変だ。


何か変だ。


おかしい。


一体、僕はどうしたと言うんだ。








思わず、右手で軽く頬を叩いてみる。





しっかりしろ、自分!










「どうか致しました?」






いきなり頬を叩き出した僕を、不安そうに見つめる女性。






……当然だな。



僕が彼女ならば、不安所か警戒心さえ抱くに違いない。





この人、大丈夫か?と。










「いえ、何もありません」








……今の日本語はおかしい。



僕自身か?








まずいな、何か話題を作ろうか。





「………えぇと…」



「宗久ぁ、桜は見れたか?」






言葉を探し戸惑う僕の後方から、場にそぐわぬ明るい声が響いた。




工藤だ。









助かった………。








何に助かったのかはわからないが、なぜかそう思ってしまった僕からは、安堵の溜息が漏れていた。






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