千寿桜―宗久シリーズ2―
「うわぁ〜、満開だな」

「うん、すごいな」





笑顔で歩み寄る工藤。


その人懐こい瞳が、僕の前に立つ女性へと向けられた。





「あれぇ?」






瞬きをしつつ、肩をすくめる工藤。







何か聞かれるかな。








思い、構えた僕を待っていたのは、予想さえしなかった展開であった。







女性は、工藤に視線を移し、笑った。









「惣ちゃん、帰って来たのね」



「今着いたんだよ。相変わらず、姉さんはここが好きだなぁ?」







姉さん?








「……………はい?」






誰の?









状況が飲み込めず、瞬きすら忘れた瞳。



その渇きかけた瞳の先に見える、屈託無く笑う工藤の顔。










「宗久、紹介するよ。俺の姉」









………………。








「工藤の?」







姉?








先刻までの高揚感は何処へやら。



今の僕は、事態を理解できない困惑に支配されていた。








混乱してきたぞ?




工藤と女性を交互に見つめる。


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