千寿桜―宗久シリーズ2―
その動作がよほどおかしかったのか、女性は小さく吹き出した。







笑みで緩む口元を指で抑え、改めてと女性は頭を下げる。



「お客様とは知らずにご挨拶が遅れまして、大変失礼致しました。お初にお目にかかります。惣一の姉の瑞江でございます。新庄様」








瑞江と名乗った女性は、見とれる程の綺麗なお辞儀を見せた。






まるで、百合の花の様だ。






「はぁ……ご丁寧に、ありがとうございます」






だがなぜ、僕の名前を知っているのだろう。








眉をひそめる僕。


表情から心境を察したのか、瑞江さんは美貌に薄い笑みを乗せる。






「弟と両親から、お名前は伺っておりましたの」

「はぁ……」



そうでしたか。







「不思議な方ですわね、新庄様って」



誉められてるのかな?






瑞江さんの感想に、なぜか慌てる工藤。


「失礼だろっ、姉さん!」


いや、別にいいよ。





「…ありがとうございます。よく言われます」






相変わらず間の抜けた返答しか出来ない僕を、瑞江さんは声を立て笑った。



.
< 24 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop