千寿桜―宗久シリーズ2―
満開の千寿桜、はらはらと舞う花びら。




夢の続きであるかの様に、その中で美しく微笑む女性。







工藤の、姉……。










なぜだろう。









その美しい笑みは、自己紹介の前と後では違ってきている気がする。








よそよそしいくらいに笑顔を浮かべる弟の方が、むしろ気になるかもしれない。


対し、明らかに目が笑っていないという、愛想笑いへと変化している姉の表情。


微妙に敵意が含まれている様な?



何かを隠されている様な?








僕は、自分の勘にはある程度の自信がある。







だがなぜか、瑞江さんへと未だ潜んでいる懐かしさが先立ち、僕の勘は思考の屋根裏の隅へと追いやられてしまっていた。






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