千寿桜―宗久シリーズ2―
それでいいのか?






「それにしても、工藤の姉さんは……」

「独特だろ?珍しいタイプって言うか」

「……………」








その通りだ。









工藤の姉さんは、華族のお嬢様という雰囲気だ。



まぁ、工藤の実家を見れば、納得できない事も無い。








先刻会った彼女は、本当に幻影ではないのかと目を疑った。






杉の木々に囲まれた神社の境内、冷えた空気が神聖に感じられる程に静かな場所に咲く桜は、威圧さえあった。



その下、佇む彼女。





桜に引けを取らぬ存在感。







まるで、そこに在るべきだと、そこが彼女の場所なのだ………と。


訴えてくる様な。






そんな印象は、衝撃的でもあった。










「姉さんはさ、亡くなった祖母に可愛がられていたんだ。祖母は茶道教授でさ、侘・寂・風流の世界の人だった。まぁそのせいで姉さんは、子供の頃から…昔で言えば花嫁修行?そんな事を叩き込まれてきた訳」



「花嫁修行……?」




今の世に実在するのか?







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