千寿桜―宗久シリーズ2―
「似合っているんだから、いいじゃないか」






身体を沈ませているソファ、その木製の肘掛けの滑らかな手触りを指先で確かめながら、僕は応えた。




意識せず、自然と口をついて出た感想だった。





だが。









「………何?」





手に持った湯呑みを口元に運ぶ動作を止め、工藤がそんな僕を見つめていた。




その、何かいいたげな表情に、思わず上半身を起こし、半分程身を乗り出す。







「何?」

「え?……あ、いや」






あぐらをかき直した工藤は視線をそらし、思い出した様にお茶をすすり始める。







微妙に泳いでいる瞳。









一体何だ?




先刻も感じたが、何か隠している様な素振りだ。




慌てる工藤の様子も、愛想笑いを浮かべる瑞江さんの美貌も。








しかも、自己紹介の直後から変化した彼女の雰囲気が気になる。







これは勘だが、何か裏がありそうな………。





あまり考えずにいたが。




聞いても、避けられそうな気もする。









…………その内、わかるかな?



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