千寿桜―宗久シリーズ２―
元々僕は、物事を焦る気性からは程遠い。


それは、自他共に認めている事だ。




それが逆に、無関心と誤解を与える時もあるが。









まぁ、いいか。







溜息と共に、思考も体外に吐き出した。




僕は、そのまま外の景色へと瞳を移す。









夕焼けが、部屋に差し込んできていた。




朱い空気が、微かに香る畳の匂いと共に、部屋を包み込んでいる。








窓越しに鼓膜に届く、心地良い、打ち寄せる波の音。







ふと脳裏に、桜吹雪が浮かんだ。



風の姿を象る様に、交わる様に、散る花びら。






綺麗だったな。










深呼吸をしてみた。



心が、安らぐ。



もう一つの故郷を訪れた感覚に酔う。








こんな時間を与えられただけでも、工藤には感謝しなくては。








千寿桜に再会できた事もかな。









床の間に飾られた生け花。

ふわりと、丸い花びらを広げる遅咲きの雪椿。




その愛らしい姿を見つめながら、僕はゆったりと瞳を閉じた。







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