千寿桜―宗久シリーズ2―
誤解と思惑
「新庄くん、よく来てくれたなぁ」








夕食、工藤家の食卓は、さすが海側の旅館であると感心せざるを得ない、豪華な魚介類がメインで並べられていた。



山育ちの僕にとっては、珍しい料理もある。






地元の漁師料理だけどと、工藤の母は笑う。





漁師料理……あんこう鍋も?

初めて見た。



この栄養価の高い新鮮な料理が、漁師のパワフルさの源なのかもしれない。




そう思う程の品揃え。






「新庄くん、酒は飲めるか」

「はい、付き合い程度にですが」




グラスを差し出され、工藤の父に日本酒を注がれた。








工藤の父は、元・漁師だと言う。



成る程。


歯の白さが浮きだつ程に日に焼けた黒い肌、どっしりと貫禄ある体格。



恐持ての顔は、堅気ですか?と問いたくなるくらいだが、豪快な笑顔の目が、無くなるくらいに細くなる所が、気持ちの良さを表しており好感が持てる。






つられて、思わず笑ってしまうくらいだ。





いい両親だな。






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