千寿桜―宗久シリーズ2―
すすめられるがままに、グラスに口を付ける。



水晶の様になめらかに揺らめく透明度の高い日本酒は、鼻をくすぐる香ばしい米の香りとほのかな甘さを含んだ、美味なものだった。







「宗久は酒が強いんだ。こいつが酔ったのは見た事が無い」







工藤の言葉に興味が湧いたのか、父親は酒が減る度に次々と注ぎ足してくる。





強いと言われても、酔わない訳では無いのだが。








それにしても、すごい歓迎だな。


息子の友人であると言うだけなのに、まるで大名扱いを受けている様な感覚だ。






ただ、一人を除いて。








座卓を挟んだ僕の向かいに座る工藤の姉、瑞江さんを除いては。









彼女は、意識的に僕を避けている様な気がする。



いや、確定かな。








瑞江さんは時折箸を止め、睨む様に僕をちらりと見ている。










………何だ?




僕は、彼女に何かしたのだろうか。







生理的に避けたい人物と言う者は、感情のある人間にならば誰の中にも存在するのだろうが………。






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