千寿桜―宗久シリーズ2―
「まぁ、飲みなさい。新庄くん」




そんな僕の心境に気付いてもいないのだろう。

工藤の父は、日本酒の瓶を傾けてくる。






母親は、刺身やら何やらを取り皿に盛ってくれる。






上げ膳据え膳だな。






好意だとは思うが、あまり気を使われるのは申し訳無く、好きでは無い。



いい両親だとわかるからこそ。








そんな事を考えながら、注ぎ足しされる酒を口に運ぶ。



工藤の父が嬉しそうだからだ。




工藤は酒が飲めない下戸だから、飲める僕が居る事が嬉しいのかもしれないな。








ふと、自分の父を思い出した。







僕の父も、帰省する度に酒をすすめてくる。


嬉しそうに瞳を細めて笑い、飲まないかと声を掛けてくる父。






共に飲める年齢にまで大きくなった息子を、確認したがるかの様に。









父親とは、そういうものなのだろうか。


僕も息子ができれば、同じ事をするのだろうか。






今の所、その様な予定は無いし、考えてもいないのだが。








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