千寿桜―宗久シリーズ2―
どうも僕は、色々な事に対して間が悪いらしい。


そう思うしか無い。







生きている者に対しても、そうで無い者に対しても。



まぁ、それが僕の流れであるのならば、逆らわない方が身の為だ。








「恥ずかしながら、振られたばかりで」

「ははは!正直な男だなぁ」




酒の肴にはなるかなと思った話は、見事に工藤の父の笑いを誘ったらしい。





「新庄くんの実家は、たいそうな資産家だそうだな?」




………それも工藤情報か?




「昔からの格式があるだけです。それに、資産があるとしても、それは僕が努力して得た功績ではありませんし」



先祖の功績だ。





それをさも己の功名の様に、誇らしげに語る趣味は僕には無い。





僕は僕だ。


それだけだ。





そんな僕を、工藤の父は面白いと笑う。




…そんなに愉快なのだろうか、僕は。









「………気に入られたな、宗久」

「え?」







煮魚をつついている工藤が、僕を見ないまま、ぽそりと呟いた。








気に入られた……とは?


どんな意味で?



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