千寿桜―宗久シリーズ2―
………良い事、なのか?
工藤の父は、上機嫌だ。
酔っているのだろうが、浅黒い肌では視覚的にはわからない、だが、笑いながら僕の背を叩く仕草から、それは感じ取れる。
正直、背中が痛い。
振動で、手に持つグラスの中で、日本酒が海の様に荒れている。
怒り上戸では無いのが救いだな。
こぼれそうな酒を慌てて半分程飲み下した僕の耳に、再び予想もしない言葉が飛び込んできた。
「新庄くん、うちの瑞江はどうだ?彼女として考えられるかね」
「――――ッゴホ!?!」
むせた。
酒が、容赦無く気管に入り込んだのだ。
入り込む異物への抵抗、身体が咳込みに激しく支配される。
詰まる呼吸の苦しさに、涙腺から日本酒が溢れ出てきそうだ。
このままだと、三途の川が見えるんじゃ?
―――ガタンッ!!
胸をさする僕の耳に、今度は、激しく食器が座卓に叩き置かれる音が響く。
途端、静まる空気。
僕の咳の嗚咽だけを残して。
.
工藤の父は、上機嫌だ。
酔っているのだろうが、浅黒い肌では視覚的にはわからない、だが、笑いながら僕の背を叩く仕草から、それは感じ取れる。
正直、背中が痛い。
振動で、手に持つグラスの中で、日本酒が海の様に荒れている。
怒り上戸では無いのが救いだな。
こぼれそうな酒を慌てて半分程飲み下した僕の耳に、再び予想もしない言葉が飛び込んできた。
「新庄くん、うちの瑞江はどうだ?彼女として考えられるかね」
「――――ッゴホ!?!」
むせた。
酒が、容赦無く気管に入り込んだのだ。
入り込む異物への抵抗、身体が咳込みに激しく支配される。
詰まる呼吸の苦しさに、涙腺から日本酒が溢れ出てきそうだ。
このままだと、三途の川が見えるんじゃ?
―――ガタンッ!!
胸をさする僕の耳に、今度は、激しく食器が座卓に叩き置かれる音が響く。
途端、静まる空気。
僕の咳の嗚咽だけを残して。
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