千寿桜―宗久シリーズ2―
何だそれはと、工藤は笑う。



「お前、待ち合わせ時間忘れてないか」

「待ち合わせ………」





言葉を反復した途端、僕はベッドから跳ね起きた。






………忘れていた。

やってしまった。


約束の時間は、朝六時であったのだ。






「ごめん……」




言い訳の仕様が無い事態に、僕は謝罪するしか無かった。







おかしいな。

目覚ましは、五時にセットしておいたのに。





一人暮らしも早三年。


目覚ましで起きる事には慣れている。





おかしな夢を見たせいだろうか。



夢を言い訳にするつもりは無いが。







「宗久が遅刻するなんて初めてだからさ、何かあったのかと思った」






ただの寝坊なのに、そんな心配をしてくれる工藤。



日頃の行いは大切だなと、今更痛感した。






いや、それ所ではない。





「悪い!すぐに行くから!」

「俺がこのまま車でそっちに向かう。すぐに着くから、顔洗って着替えておけよ」




感謝だ。



電話を切った僕は、あくびをする間も無いまま、慌ただしく着替えを始めた。


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