千寿桜―宗久シリーズ2―
「伝説と歴史、世を流れる人々の想い。歯痒さ、苦痛、悲痛…歓喜……事実と真実が絡み合いすぎて、わたくしには解く事ができません。あなたが解いて下さらないと、あの方とわたくしは…永遠に離れたまま……」



「あの方……?」


誰の事を指している?







「そしてあの子も……この地に縛られたまま」



「…………」







彼女の言葉は抽象的すぎる。




まるで、詩の朗読。


自分の中に在る想いを吐き出しているだけの様。








桜の力を借りていると言う彼女。



未練が、招いている事は確実。






未練とは何?






僕が掴むべき事が、未練を断ち切る事に繋がるのだろうが。






あの方とは?



あの子とは?








絡み合う、事実と真実……解くのは僕?












「あなたが力を持って今生の世に生まれ落ちたのは、偶然ではありません」






……僕の力が偶然ではない?








驚愕に支配されていく僕の思考。




彼女は、桜は、どこまで知るというんだ。







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