千寿桜―宗久シリーズ2―
目の前には、悠々と広がる海のパノラマ。




穏やかに揺れる、青い海。







窓を開けると、潮を含んだ風が、心地よく鼻を刺激してくる。



伸びをして、縮こまっていた背筋を伸ばす。




深呼吸をし、海風で肺を満たした。








いい空気だ。


気持ちがいいな。









「あれ?」








庭に視線を落とした。


工藤の父だ。






上半身裸で、何かを振り回している?



何をしているのだろうか。








思わず笑った。




朝から元気だな。


さすがとしか言い様が無い。






昨夜はだいぶ酔っていた様だが、全然そんな風には思えない元気っぷりだ。








僕の視線に気付かないまま、手に持つ何かを振り下ろしている工藤父。




気合いなのか、声も上げている。






面白い。








挨拶でもしてこようかな。



朝の庭にも出てみたいし。




早起きも、何かの縁かな。






未だ眠りに支配されている工藤を横目に、僕は浴衣の帯に手を掛け、着替えを始めた。








.
< 55 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop