千寿桜―宗久シリーズ2―
一階。
古い家独特の、ひんやりとした空気の流れを感じながら、僕は廊下から縁側へと回る。
この家の草花や木々は行儀がいい。
庭先で気合いを入れている工藤父を、静かに見守っている様だ。
僕の実家の庭ならば、すでにからかわれているだろう。
「おはようございます」
開け放たれた縁側の戸。
上半身裸の、工藤父の背に声を掛けた。
振り向いた父の手には竹刀。
ああ、何をしているのかと思ったら、剣道の素振りだったのか。
てっきり乾布摩擦かと思った。
僕を見つけた工藤父は、白い歯を見せ笑う。
「新庄くんか!若いのに早起きだな」
「はは……習慣で」
自分からじじくさいと明言している様な台詞だな。
「おじさんは、朝から素振りですか」
「これが毎朝の習慣でな」
言いながら、軽く竹刀を振って笑う工藤父。
その竹刀で、部屋で眠る息子も起こしてあげればいいのに。
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古い家独特の、ひんやりとした空気の流れを感じながら、僕は廊下から縁側へと回る。
この家の草花や木々は行儀がいい。
庭先で気合いを入れている工藤父を、静かに見守っている様だ。
僕の実家の庭ならば、すでにからかわれているだろう。
「おはようございます」
開け放たれた縁側の戸。
上半身裸の、工藤父の背に声を掛けた。
振り向いた父の手には竹刀。
ああ、何をしているのかと思ったら、剣道の素振りだったのか。
てっきり乾布摩擦かと思った。
僕を見つけた工藤父は、白い歯を見せ笑う。
「新庄くんか!若いのに早起きだな」
「はは……習慣で」
自分からじじくさいと明言している様な台詞だな。
「おじさんは、朝から素振りですか」
「これが毎朝の習慣でな」
言いながら、軽く竹刀を振って笑う工藤父。
その竹刀で、部屋で眠る息子も起こしてあげればいいのに。
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