千寿桜―宗久シリーズ2―
「まったく、何事かと思ったよ。待ち合わせ場所に居ないし」
「本当にごめん」
工藤が運転するミニクーパーのコンパクトな助手席、小さくまとまり、僕はうなだれて座っていた。
言い訳の仕様が無い。
せめて態度で示そうと、まだ寝癖のついたままの頭を、申し訳なさそうに掻き回すので精一杯だ。
「宗久も寝坊するんだな」
「……うん、悪かった」
もういいからと笑いながら、工藤は温かい缶コーヒーを差し出してくれた。
苦笑いで受け取り、プルタブに指をかける。
大学四年への進級を控えた春休み、僕は工藤と共に、海沿いの小さな町へと向かっていた。
工藤の実家だ。
「暇なら遊びに来いよ」
実家に帰省すると言う工藤に誘われたのは、つい先週。
特に用事も無い僕は、その好意を受けた。
友人の実家に、泊まりで遊びに行く。
普通ならば遠慮が先立つものだが、なぜか僕は行くと即答していた。
自分でも驚いた。
考える間も無く返答していたのだから。
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「本当にごめん」
工藤が運転するミニクーパーのコンパクトな助手席、小さくまとまり、僕はうなだれて座っていた。
言い訳の仕様が無い。
せめて態度で示そうと、まだ寝癖のついたままの頭を、申し訳なさそうに掻き回すので精一杯だ。
「宗久も寝坊するんだな」
「……うん、悪かった」
もういいからと笑いながら、工藤は温かい缶コーヒーを差し出してくれた。
苦笑いで受け取り、プルタブに指をかける。
大学四年への進級を控えた春休み、僕は工藤と共に、海沿いの小さな町へと向かっていた。
工藤の実家だ。
「暇なら遊びに来いよ」
実家に帰省すると言う工藤に誘われたのは、つい先週。
特に用事も無い僕は、その好意を受けた。
友人の実家に、泊まりで遊びに行く。
普通ならば遠慮が先立つものだが、なぜか僕は行くと即答していた。
自分でも驚いた。
考える間も無く返答していたのだから。
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