千寿桜―宗久シリーズ2―
「おじさん」
僕は、目の前で素振りを続けている工藤父の背に声を掛けた。
「裏山の桜なんですが……」
桜?と工藤父は、疑問に太い眉を跳ね上げた。
「あの桜は、いつの時代からこの地に咲いているものですか」
「いつ…だろうなぁ。正確にはわからんが、伝承では戦国の世からだな」
伝承………やはり何か言い伝えがあるのだ。
「あの桜は、なぜ千寿と呼ばれているのかわかりますか」
興奮、していたのかもしれない。
問い詰める様な僕の口調に、工藤父は困惑しながらも、これも伝承だがと教えてくれた。
「何でも千寿と言う姫が、あの桜の下で亡くなった事からだと」
脳裏に、桜の下に佇む女性の姿が浮かんだ。
朱色の着物に身を包んだ、美しい女性の…。
戦国時代、桜の元で果てた………彼女が………?
千寿姫?
花びらを握りしめた手の平が、汗ばんでいた。
だが、心は高揚していた。
見つけた。
忘却の彼方、そこに在る漂う糸を………。
.
僕は、目の前で素振りを続けている工藤父の背に声を掛けた。
「裏山の桜なんですが……」
桜?と工藤父は、疑問に太い眉を跳ね上げた。
「あの桜は、いつの時代からこの地に咲いているものですか」
「いつ…だろうなぁ。正確にはわからんが、伝承では戦国の世からだな」
伝承………やはり何か言い伝えがあるのだ。
「あの桜は、なぜ千寿と呼ばれているのかわかりますか」
興奮、していたのかもしれない。
問い詰める様な僕の口調に、工藤父は困惑しながらも、これも伝承だがと教えてくれた。
「何でも千寿と言う姫が、あの桜の下で亡くなった事からだと」
脳裏に、桜の下に佇む女性の姿が浮かんだ。
朱色の着物に身を包んだ、美しい女性の…。
戦国時代、桜の元で果てた………彼女が………?
千寿姫?
花びらを握りしめた手の平が、汗ばんでいた。
だが、心は高揚していた。
見つけた。
忘却の彼方、そこに在る漂う糸を………。
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