千寿桜―宗久シリーズ2―
ねぇ、千寿姫。



あなたに聞きたい事が、山ほどにあるんです。









彼女は、応えてくれるだろうか。







だが、じっとしてはいられない。








桜が、呼ぶから。




来い、と。




ここへ来い、と……。








誘われている。










歩を進め、正面に出る。





途端、視界を横切る桜の花びら。








舞う、桜吹雪。



その中、佇む様にも立ち尽くす様にも見える千寿桜。





ただそこに在るだけなのに、誇り高きその姿は、周りの景色をモノクロの様に映し出す。




漂う雰囲気は、無意識な引力。






強い力。








ああ、やはり綺麗だ。









桜の傘の下に入り、太い幹に指を滑らせる。











千寿姫。




あなたは、何を求めているのですか?



桜の力を借りてまで、残した想いとは何ですか。










問い掛ける。


だが、なぜだ?




姫自身の気配が……掴めない?





千寿姫。







あなたは今、どこに居ますか……。




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