千寿桜―宗久シリーズ2―
「……あら?」
幹に手の平を押し当て、応えを待つ僕の背後から声が響いた。
瑞江さんだった。
右手に箒を握りしめ、左手に小さな竹製の桶を下げた瑞江さんだ。
京紫色の地に白い小花模様の着物が、彼女の白い肌色を引き立てている。
上半身のみで振り向いた姿勢のまま、言葉を失う僕を見つめ、瑞江さんは睨む様に軽く瞳を細めている。
「朝から何をしていらっしゃるの?」
…………何?
そんな恐い顔をされたら……警官に職務質問をされている気持ちになる。
ある意味、桜より迫力。
「いや、その…花見でしょうか…」
「花見?」
更に瞳を細め、微かに形良い眉を跳ね上げる瑞江さん。
「春ですし……晴天ですし、見事な桜ですし」
慌てて取り繕う。
「…お若いのに、随分とお年寄りに近いご趣味をお持ちですのね」
無表情に、言葉を吐く。
皮肉なのだろうな。
口調がやわらかい為、嫌な印象を受けないが。
.
幹に手の平を押し当て、応えを待つ僕の背後から声が響いた。
瑞江さんだった。
右手に箒を握りしめ、左手に小さな竹製の桶を下げた瑞江さんだ。
京紫色の地に白い小花模様の着物が、彼女の白い肌色を引き立てている。
上半身のみで振り向いた姿勢のまま、言葉を失う僕を見つめ、瑞江さんは睨む様に軽く瞳を細めている。
「朝から何をしていらっしゃるの?」
…………何?
そんな恐い顔をされたら……警官に職務質問をされている気持ちになる。
ある意味、桜より迫力。
「いや、その…花見でしょうか…」
「花見?」
更に瞳を細め、微かに形良い眉を跳ね上げる瑞江さん。
「春ですし……晴天ですし、見事な桜ですし」
慌てて取り繕う。
「…お若いのに、随分とお年寄りに近いご趣味をお持ちですのね」
無表情に、言葉を吐く。
皮肉なのだろうな。
口調がやわらかい為、嫌な印象を受けないが。
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