千寿桜―宗久シリーズ2―
だが、瑞江さんに敵意を抱いてはいない僕は、受ける意味も無い。




「ああ、それ、よく言われます。年寄り臭いと」





笑い、頭を掻きながら軽く受け流した。









意表をつかれたのか、瑞江さんは大きな黒瞳を見開き、数回瞬きをした。



それから小さく俯いて…口元を緩めるのが見えた。







……笑われてる。









「新庄様って……拍子抜けしてしまう雰囲気をお持ちですわよね」







やんわりとした笑み。





その表情から険しさが消え、春の木漏れ日の様な穏やかさが流れ漂う。









笑っている方が、更に美しさが際立つのに。




瑞江さんが僕に敵意を抱いてしまうのは、昨夜の強行抜き打ち見合いが原因なんだろうな。








「あの…」

「はい?」

「昨夜はその……すいませんでした。失礼だったと感じていまして…その、つまり……」





あれ?


僕はこんなに不器用だったかな?


言葉が続かない。







右手で髪を掻き回しながら、しどろもどろと語る僕の口調がおかしかったのか、更に瑞江さんは笑う。




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