千寿桜―宗久シリーズ2―
神は、時により姿を変えるので、本当の姿は僕も知らない。







日本には、八百万(やおよろず)の神々がいる。



そして元来、神には陰と陽があり、善と悪の二面性もある。



「古事記」や「日本書記」では、神の残虐性に触れている記述もある。





神様を尊敬する気持ちはあるが、たまにとんでもない試練も与えられたりするので、気は抜けない。









「両親は忙しいので、わたくしが代理で掃除をしていますの」





他にいないだろう。


時々帰省する弟は、朝食に遅れて現れるのん気さだし。








「大変ですね」

「今日は教室は休みですし、わたくし、掃除も嫌いではありません」







掃除が嫌いでは無い、か。


かいがいしくはある。








だが、このタイミングで会い、尚且つ掃除をするのだと言われたら、大変だと言ってしまった手前だ。





「……手伝いましょうか?」






流れではこう言うしかないな。








「本当ですの?嬉しい」





僕の提案に、瑞江さんの表情に、みずみずしい笑みが乗る。






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