千寿桜―宗久シリーズ2―
う〜ん………遠慮は無しですか。



少し期待していたんだけれどなぁ。







外見は似ていなくても、さすがは工藤の姉。









瑞江さんが持つ桶を受け取り、僕は少しだけ後悔しながら着物の後ろ姿に続いた。















「新庄様、雑巾はもっと固く絞りませんと、床を痛めてしまいますわ」







「汚れたら面を変えて……」








「腕だけで拭こうとしてはいけません。腰から力を入れなくては」









「奥から手前に向かって綺麗にしませんと、拭いたそこから手垢が残ってしまいますわよ」









……………小姑だ。





いや、掃除とは奥が深い……そういう事にしておこう。









微かにきしむ木の床に両膝をつき、僕はせっせと掃除に勤しむ。



後悔を噛み締めながら…。








社(やしろ)の中は、外見から見たままのコンパクトさで、四畳程の広さだ。




奥中央には小さな祭壇があり、古い銅鏡が鎮座している。






昔はあそこで、誓約(うけひ)を行っていたのだろう。




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