千寿桜―宗久シリーズ2―
その両脇に捧げられた榊は、薄暗い空間の中、青々と茂り新芽も頭を出している。



毎朝、誰かが水を変えているのだろう。







小さいながらにも社には、神の存在感が張り詰めている。









「新庄様が手伝って下さって助かりますわ」




笑いながら、扉の砂を箒で払う瑞江さん。









そうですか?


怒られてばかりの様な気がしますが。








「一人ですと、一時間はかかってしまいますから」




そういうものですか?






心中で呟きながら、床と見つめ合う。












瑞江さんが一時間かかると言った掃除は、僕の手伝いも幾分かは役に立ったのか、だいぶ早く終われたらしい。






丸めていた背を伸ばし、僕は伸びをする。





雑巾掛けとは、疲れるものなんだな。





毎朝、家を掃除しているだろう母を思い出し、今更ながらに感謝した。








「家に戻りましたら、お礼にお茶を一服点てさせて下さいな」





ああ、祖母が茶道教授とか聞いたな。








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