千寿桜―宗久シリーズ2―
「お茶なんて久しぶりです」
「お好きですか?」
「実家に居た頃は、よく母に茶会に付き合わされましたからね。高校時代は、部の練習場の隣が茶道部でしたから、お茶菓子欲しさに遊びに行ってました」
瑞江さんは、丸い声を転がす様に笑う。
「新庄様のお点前も見せて頂きたいわ」
「見様見真似程度ですよ?」
笑みを返し、扉に手を掛け押し開ける。
先刻までの天気ならば、ここで陽射しが目に染みてくる筈。
だが……。
「……………雨?」
いつの間に?
首を傾げてしまう程、外は激しい雨に変わっていたのだ。
「嘘…」
瑞江さんの呟きに、僕は半分呆けたままうなづきだけを返す。
嘘みたいな雨だ。
扉の半歩外、飾り程度に付けられた様なささやかな屋根、その下から空を見上げる。
晴れ間はどこへやら、空は灰色の雲に征服されていた。
空の高い位置、ゆっくりと流れる雲。
身を軽くしたい雲の意図だろう、大粒の雫を地上に落としている。
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「お好きですか?」
「実家に居た頃は、よく母に茶会に付き合わされましたからね。高校時代は、部の練習場の隣が茶道部でしたから、お茶菓子欲しさに遊びに行ってました」
瑞江さんは、丸い声を転がす様に笑う。
「新庄様のお点前も見せて頂きたいわ」
「見様見真似程度ですよ?」
笑みを返し、扉に手を掛け押し開ける。
先刻までの天気ならば、ここで陽射しが目に染みてくる筈。
だが……。
「……………雨?」
いつの間に?
首を傾げてしまう程、外は激しい雨に変わっていたのだ。
「嘘…」
瑞江さんの呟きに、僕は半分呆けたままうなづきだけを返す。
嘘みたいな雨だ。
扉の半歩外、飾り程度に付けられた様なささやかな屋根、その下から空を見上げる。
晴れ間はどこへやら、空は灰色の雲に征服されていた。
空の高い位置、ゆっくりと流れる雲。
身を軽くしたい雲の意図だろう、大粒の雫を地上に落としている。
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