千寿桜―宗久シリーズ2―
―事実と真実が絡み合い……―






夢の中で彼女は……姫は僕にそう言った。









事実、真実。




絡み合う、二つの……。










別………なのか?









事実と真実は、対となる裏返しの歴史と?



事実の裏に真実がある、と?





事実は、必ずしも真実では無いと?







真実が、あるのかもしれない。




夫に、八嶋保明に殺された姫。



それは事実であるに過ぎず、真実は別にあるのだろうか。





あるとしても、現代に魂を置く僕に、それを掴める可能性はあるのだろうか。





どうすれば知る事ができる?



どうすれば………。






「……………」









考えても、やはり無理だ。



真実は、その時代に生きた者にしか分からないもの。



だからこそ、真の実話。




後世に生きる僕達には、実った事柄しか知り得る事が出来ない。







だが、これだけは理解できる。



僕の胸の疼きは、真実に対して反応しているのだと。




せめて、千寿姫の魂と対話する機会さえあれば……。



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