千寿桜―宗久シリーズ2―
俯き、思考に意識を委ねる僕の肩に、ふと、重さが圧し掛かる。






視線のみ這わせると、瑞江さんの額が間近に飛び込んできた。









…………眠っている?










瑞江さんは、僕の肩に頭を乗せ、微かな寝息を立てていた。





その事態に、焦りや呆れより、むしろ感心。






瞬間睡眠じゃないか。



ある意味すごい。



ここで眠れる事自体がすごい。






笑いが漏れた。




案外、神経が太いんだな。


面白い人だ。






肩に掛かる瑞江さんの重さ。


なぜか心地良く感じている。







柔らかい呼吸音。




それに乗る様に、流れてくる淡い香り。




それは、瑞江さんの着物からだった。


着物にお香を焚きしめているのだろう。






思わず鼻を利かせる。


この、爽やかな中に強さを包んだ様な香りは……白檀かな?









瑞江さんを起こさない様に、静かにあぐらを組み直した。




扉に視線を移す。






雨音、社の中に入り込む、湿度の高い空気。







雨はまだ、止みそうにない。

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