千寿桜―宗久シリーズ２―
再会
工藤の運転する車は、高速道路を降り、山道に入る。


連なる山の景色。

その新緑の中、ぽつぽつと浮かぶ遅咲きの桜の色が、目を楽しませてくれる。







淋しい冬から一転し、春は賑やかだ。





眠りから覚めた草花が囁き始め、暖かさに引き寄せられた動物達が太陽を仰ぐ。


散歩をしていると、そんな者達の春を喜ぶ声が聞こえる。








春は、生き物が集う季節。

長い冬を越えた者達が、日だまりを求めて動き出す季節。






気分が、高揚する。



科学と言う文明の中に生きる人間も、例外ではないのだと感じる。












物思いに耽る内に、車はやがて山道を抜ける。


下り坂のカーブ、緩やかに揺れる車内。









「海だ」







山の間を抜けた途端、道の向こう、見下ろす視界に海が広がった。





鮮やかな空の青が溶け込んだ海、穏やかに揺らめく波、春の日差しを受けて光をはらむ水面。




そして、白い砂浜を中心に半球状に伸びる、小さな町の景色。




入江に小さな港があり、船が並んでいる。






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