千寿桜―宗久シリーズ2―
溜息が漏れた………途端。
ゆらりと、目の前を何かが横切った。
見過ごしてしまいそうなくらい、小さな何か。
それは、時計の振り子の様に、大きく左右に揺れながら、音も無く僕の膝の上へと舞い落ちた。
………………花びらだ。
我に返り、慌てて天井を見上げた。
どこから落ちてきたのか。
―まだ、思い出せませんか?―
天井へ泳がせていた瞳を、ふいと落とした。
声が、響いた。
社の中にでは無い。
耳でも無い。
僕の意識の中にだ。
辺りを見回す僕の頬に、今度は、ひやりと冷たい感触。
嫌な冷たさでは無いが…。
…何?
―あなたはもう、記憶の岸辺に辿りついているというのに……―
僕の頬に触れたもの。
それは、白い指先。
そして僕の目の前に…同じ目線のそこにある顔は………。
「千寿…姫……」」
夢の中の、女性であった。
.
ゆらりと、目の前を何かが横切った。
見過ごしてしまいそうなくらい、小さな何か。
それは、時計の振り子の様に、大きく左右に揺れながら、音も無く僕の膝の上へと舞い落ちた。
………………花びらだ。
我に返り、慌てて天井を見上げた。
どこから落ちてきたのか。
―まだ、思い出せませんか?―
天井へ泳がせていた瞳を、ふいと落とした。
声が、響いた。
社の中にでは無い。
耳でも無い。
僕の意識の中にだ。
辺りを見回す僕の頬に、今度は、ひやりと冷たい感触。
嫌な冷たさでは無いが…。
…何?
―あなたはもう、記憶の岸辺に辿りついているというのに……―
僕の頬に触れたもの。
それは、白い指先。
そして僕の目の前に…同じ目線のそこにある顔は………。
「千寿…姫……」」
夢の中の、女性であった。
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