千寿桜―宗久シリーズ2―
真実 1
季節は春。
眩しい程の太陽の日差し。
目にも鮮やかな新緑の中、俺は屋敷へと戻る道を、風をきりながら走っていた。
耳に届く愛馬トキの蹄(ひづめ)の音が、頬に、額にあたる風に混じり、身体を揺さぶる。
時折、手綱を握る手をトキの柔らかな鬣(たてがみ)がくすぐる。
肌にまとわりつく様な、着物の感触さえも心地良い。
春は、全てが心地良く感じられる季節だ。
「早く来い!源三郎」
後方を、同じく馬を駆り着いて来る共を振り返り、声を掛ける。
「はい、保明様」
源三郎は、急かす俺に笑いを返してきた。
まるで、子供の我が儘に付き合う大人の表情だ。
仕方が無い。
北上源三郎は、俺が幼少期から側に着いていた者。
俺の乳母の実子にあたる。
つまり、乳飲み子の頃から知られているのだ。
十年差があるせいか、兄の様でもあり、時には同年の遊び相手にもなる男。
こうして、突然の野駆けにも嫌な顔一つせずに着いて来る。
悪態はつくが。
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眩しい程の太陽の日差し。
目にも鮮やかな新緑の中、俺は屋敷へと戻る道を、風をきりながら走っていた。
耳に届く愛馬トキの蹄(ひづめ)の音が、頬に、額にあたる風に混じり、身体を揺さぶる。
時折、手綱を握る手をトキの柔らかな鬣(たてがみ)がくすぐる。
肌にまとわりつく様な、着物の感触さえも心地良い。
春は、全てが心地良く感じられる季節だ。
「早く来い!源三郎」
後方を、同じく馬を駆り着いて来る共を振り返り、声を掛ける。
「はい、保明様」
源三郎は、急かす俺に笑いを返してきた。
まるで、子供の我が儘に付き合う大人の表情だ。
仕方が無い。
北上源三郎は、俺が幼少期から側に着いていた者。
俺の乳母の実子にあたる。
つまり、乳飲み子の頃から知られているのだ。
十年差があるせいか、兄の様でもあり、時には同年の遊び相手にもなる男。
こうして、突然の野駆けにも嫌な顔一つせずに着いて来る。
悪態はつくが。
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