千寿桜―宗久シリーズ2―
「お急ぎになるあまり、お怪我等されては大事ですよ」
源三郎はそう言うが、それはからかいだ。
俺の乗馬の腕は、源三郎が一番よく知っている。
「早く見てみたいではないか、森山の姫をな」
「保明様の奥方様になられるお方ですからね」
「政略だがな」
「ですが、殿のご命令とあらば、拒絶なさる事はできません」
そうなのだ。
今年元服を迎える俺に、殿…父である八嶋秀久は、妻を娶らせるそうだ。
隣の領主である、森山義元の娘をだ。
それが政略である事は明白。
要するに人質だろう。
それは、当然の事。
規模で言えば、八嶋の方が力量は上。
今回、この話を持ち掛けてきたのは森山からだ。
ぜひ、当家の姫をと。
それは、力の上下関係の位置を示す。
我々は八嶋には逆らいません、うまく付き合って下さい、と言う意味だ。
聞く所によると、姫は側室の娘であるらしい。
正妻との間に、女児は恵まれなかったそうだ。
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源三郎はそう言うが、それはからかいだ。
俺の乗馬の腕は、源三郎が一番よく知っている。
「早く見てみたいではないか、森山の姫をな」
「保明様の奥方様になられるお方ですからね」
「政略だがな」
「ですが、殿のご命令とあらば、拒絶なさる事はできません」
そうなのだ。
今年元服を迎える俺に、殿…父である八嶋秀久は、妻を娶らせるそうだ。
隣の領主である、森山義元の娘をだ。
それが政略である事は明白。
要するに人質だろう。
それは、当然の事。
規模で言えば、八嶋の方が力量は上。
今回、この話を持ち掛けてきたのは森山からだ。
ぜひ、当家の姫をと。
それは、力の上下関係の位置を示す。
我々は八嶋には逆らいません、うまく付き合って下さい、と言う意味だ。
聞く所によると、姫は側室の娘であるらしい。
正妻との間に、女児は恵まれなかったそうだ。
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