千寿桜―宗久シリーズ2―
側室と言えど、第一の姫。



不服の範囲では無いが、会った事も無い姫。




八嶋家の次男として、その婚姻を受ける事は義務だ。


だが、少々不満を感じるのも事実。





源三郎にそれを吐き出したら、まだまだお若い、と笑われたのだが。









「二目と見られぬ御面相であったならば、側室に期待するしか無いだろうな」

「お会いになる前に、その様な悪態をおつきになりますな。美女であったならばどうです」

「ははは…あの森山の猿面の娘だぞ?美女である筈がなかろうが。期待するには説得が足りぬ」






源三郎は、現・森山家の当主の顔を思い出しているらしい。




返答できないまま、眉をひそめ苦笑いを浮かべている。




素直な男だ。







まぁ、美女であったならば、幸運を使い果たす覚悟が必要だな。







笑い、手綱を握り直した。





遠くに視線を見据える。






屋敷の景色が、遠くに見え始めていた。











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