千寿桜―宗久シリーズ2―
トキの歩調を緩め、屋敷の高い壁を右に眺めながら揺られる。






終点が見えない程に続く白い壁。


それを内側から囲む様に咲き乱れる桜並木が、外道にまで花びらを敷き詰めていた。






春にのみ作られる花道。






風に舞う花びらは、まるで雪の様だ。









この道は領民達に親しまれているらしく、桜道と呼ばれているらしい。






空中を舞う花びらを掴もうと、戯れる子供達の姿もよく見かけられる。





門番に見つかれば、追い払われてしまう。







疑問だ。



領民あっての領主だと言うのに。




俺達が戦に出るのは、領民を守る為ではないのか?



この土地と領民を守る為に、武士は在るのではないのか?







領民も俺も、同じ人だ。


この土地を慈しみ、生きている。



美しいものを美しいと感じる心も同じだ。



季節を愛でるのは、武士のみの特権では無い。





身分の違い……俺には、よくわからない。




俺はたくさん、領民と接していきたい。







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