千寿桜―宗久シリーズ2―
武力に長けた者が権力を得る。



今の世は、それが道理。







しかし、本当に力だけなのだろうか。






生まれながらにして得ている待遇により、自分は力があると思い込んでいるだけの者がいてもおかしくは無い。




それが武士でも、領主でもだ。





領民が従わなければ、力で組み伏せる。



刀で斬る。





それは武士道であると言うが、果たして人道ではあるのか?








その発言だけは、源三郎に釘を刺された。





「その様な事を、私以外の者には決して言ってはなりませんよ」


……と。












ようやく着いた屋敷の裏門から、馬を乗り入れる。




すぐ目の前に、南の馬場があるのだ。








「私がトキをお預かり致します。保明様は、どうぞ殿の元へ」


「いや、自分で連れていく」






トキから降り、手綱を引きはじめた俺に、そうおっしゃると思いましたよと源三郎は肩をすくめる。




南の馬場へ行きたがる理由が、源三郎にはわかるのだ。









.
< 88 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop