千寿桜―宗久シリーズ2―
真実 2
「ふふふ…」

「……何だ」







自室にて、書物の整理をしている俺の隣では、源三郎が笑っている。


いや、正解にはここ七日間、源三郎はずっと笑っている。








言いたい事は分かるのだ。



だが、あえて聞かない。


聞きたくない。




からかいだと分かるからだ。










「千寿姫、お美しい方でようございました」



ほらきた。



「男冥利ではありませんか。側室に期待等は、遠く彼方に飛び立ちましたかな?」



始まった。









「何が男冥利だ。あの様な可愛いげの無い女」





気の無い俺の返答にも、源三郎は動じない。


源三郎にとっては、俺をからかうのも楽しみの一つに違いない。




そう思わずにはいられない。











確かに、千寿は美しい姫だ。



それは認めよう。



だが、態度が気に入らない。








父上から紹介を承り、千寿とはそつなく挨拶を交わした。



形式としては、何も違和感無く。







問題はその後だ。







.
< 92 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop