千寿桜―宗久シリーズ2―
「ここはぴしりと、夫としての印象をつけていらっしゃい」
そう言いながら、反面は面白そうだと言わんばかりの源三郎に急かされ、そういうものなのかと思いつつ、千寿の部屋を訪れた時の事だ。
何を話していいものやらと悩む俺を前に、千寿はゆったりと頭を下げてこう言った。
「わたくしは、保明様の妻になります。あなたの御意向に背く事の無い様、勤めさせて頂きます」
つきましては…と、言葉を続けた。
「わたくしの事は、妻の形として扱って頂ければそれだけでかまいません。それ以上は側室にご期待下さいませ。わたくしは妻となるべく、八嶋家に来た女でございます。形以上の真意も望みも、何一つございません。保明様には、それらをご承知、ご承認なされた上で、わたくしとお付き合い下さいます様、お願い申し上げます」
「…………?」
意味が分からず眉をひそめた俺に、千寿は笑顔を見せた。
それに、底知れぬ何かを感じてはいた。
理解できないまま千寿の部屋を後にした俺は、源三郎に意味を求めたのだ。
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そう言いながら、反面は面白そうだと言わんばかりの源三郎に急かされ、そういうものなのかと思いつつ、千寿の部屋を訪れた時の事だ。
何を話していいものやらと悩む俺を前に、千寿はゆったりと頭を下げてこう言った。
「わたくしは、保明様の妻になります。あなたの御意向に背く事の無い様、勤めさせて頂きます」
つきましては…と、言葉を続けた。
「わたくしの事は、妻の形として扱って頂ければそれだけでかまいません。それ以上は側室にご期待下さいませ。わたくしは妻となるべく、八嶋家に来た女でございます。形以上の真意も望みも、何一つございません。保明様には、それらをご承知、ご承認なされた上で、わたくしとお付き合い下さいます様、お願い申し上げます」
「…………?」
意味が分からず眉をひそめた俺に、千寿は笑顔を見せた。
それに、底知れぬ何かを感じてはいた。
理解できないまま千寿の部屋を後にした俺は、源三郎に意味を求めたのだ。
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