千寿桜―宗久シリーズ2―
夫を立てる所か、逆に妻を立てろと言われている様なものではないか。




思い出すだけでも腹が立つ。








「何が形以上の真意は無い、だ。気取りおって!」





手に持っていた書物を、隣に座る源三郎の肩に放り投げる。




やれやれとため息をつき、投げられた書物を畳の上に並べながら源三郎は笑う。






「気がお強いのも、魅力の一つとお考えになられては?」

「はっ?魅力?寝ぼけるな」

「美女なのですから、良いではありませんか」

「お前は、美女ならば何でも許せるのか?」

「はい、命に関わる事態にさえならなければ」








……気が抜けた。


源三郎にとっては愚問だな。






「女好きのお前に聞くのは間違いであったな」



源三郎は、不本意だと瞳を細める。



「私は女好きではありません。誰でも良い訳ではありませんから」






源三郎は、自然と女を引き付ける奴だ。



男らしい容姿に恵まれている上に、剣の腕も群を抜いて強い。


学問に関してもだ。





その賢さの分、悪知恵も働くのだが。






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