千寿桜―宗久シリーズ2―
その悪知恵で、数人の女との逢瀬を楽しむ悪い男だ。





数々の縁談を断り、源三郎は未だ独り身。


俺が元服して妻を娶るまでは、自分も身を固めないのだそうだ。







女遊びの都合良い言い訳にしか聞こえないのだが。








「さっさと身を固めて、両親を安心させてやれば良いものを」


「ご心配は無用です。家督は兄上が継ぎますし、私は気楽な三男坊です」





……気楽すぎだ。







「私の事等よりも、保明様が気になります。お美しい姫と凛々しい保明様、美男美女ですからねぇ……さぞやお美しい御子に恵まれるのでしょうなぁ」



思考は夢心地か、赤子を抱く仕草で天井を見上げ、にやつく源三郎。




「妄想を膨らますな。森山の父に似た子ならばどうする」


「……あ〜」



想像しているのだろう。


源三郎は、苦湯を飲む表情だ。






子か。




今のままでは、そこまでは考える事はできない。










千寿。



あの生意気な姫は、何を考えているのか分からないからだ。




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