千寿桜―宗久シリーズ2―
真実 3
季節は、梅雨を迎えていた。


長い長い、雨の時。




全てがしんみりとし、湿気を含むせいなのか身体も重く感じる。

停滞を余儀なくされる。









春の色の面影も、庭からは消えている。


緑一色だ。


薄紅色の花を魅せた桜も葉のみの姿に剥がされ、灰色の空を背景に、所在なさ気に佇む。





農民にとっては恵みの雨であろうが、俺はと言えば野駆けにも行けず、こうして猫の様にぼんやりと部屋に寝転がり、庭を眺めて時を過ごすしか無い。








「はぁ〜…暇ですねぇ」




隣では、お茶をすすりながら源三郎が呟いている。



「言うな、余計に退屈になるではないか」

「まぁ、退屈であるのは平和でもある証ですからね。南や北では、激しい戦があるのですから」

「そうだな」





世の中は、戦が絶えない世。


あちらこちらでは、武力に長けた武将が名乗りを上げ、「天下を取る」を掲げ、戦略戦術を競いあっている。



天下を取る。


武士ならば、一度は描く夢なのだろうか。



後世に名を残したいと。







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