スピリット・オヴ・サマー
「…いいんです、何もかも知ってて、その上で先輩のこと、好きになったから…、だからっっ…!それ、に、最後、に…私の、こと、抱いてくれ、…た…。」
「『聖菜』っ…!」
 抱きしめていなくては、この、愛しい幻は、どこか遠くへ行ってしまう。憲治は「聖菜」の身体を更に一層強く抱いた。
「…せ、ん、ぱ、い、会え、て…よかっ…。」
 血の気の失せた「聖菜」の唇の隙間から、最後の言葉が零れた。そして、最後の電子の粒が、名残惜しげに、しかし尚一層輝きを増しながら空気に紛れた。
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