スピリット・オヴ・サマー
だが、思い出したように階段を早足で上がると、憲治は自室の隣、父の書斎に入った。
部屋の電気をつけた途端に浮かび上がる壁一面の本棚。その中から、「ユング」の文字のある背表紙を無造作に一冊つかみ、続けてCDラックの中から「ドビッシー」の名前のあるものを一枚引き抜いた。
憲治の鼓動が高鳴る。
「ユング」と「ドビッシー」。それは「憧子」の存在を身近にするためのアイテム。今の憲治には、それ以外の何物でもなかった。
部屋の電気をつけた途端に浮かび上がる壁一面の本棚。その中から、「ユング」の文字のある背表紙を無造作に一冊つかみ、続けてCDラックの中から「ドビッシー」の名前のあるものを一枚引き抜いた。
憲治の鼓動が高鳴る。
「ユング」と「ドビッシー」。それは「憧子」の存在を身近にするためのアイテム。今の憲治には、それ以外の何物でもなかった。