スピリット・オヴ・サマー
 しかし、後悔することを恐れるあまりに、自分の心を偽ることでその場を逃れ、結果として更に大きな後悔を背負う羽目になっていた今までの憲治の心を開き、開放してくれたのが「憧子」なのだ。
 だが皮肉なことに、開放してくれたはずの「憧子」に心奪われている。別に、「憧子」が美少女だからと言うわけではない。それが無いとは言わないが、「憧子」に心魅かれる重要な要素にはなりえてはいなかった。むしろ、その美しさが憲治を思い止まらせていると感じている。だからこそ、顔が見えない抱擁や、薄明かりのキスが愛しかったのかも知れない。
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