スピリット・オヴ・サマー
プール監視を終えて家に戻ると、母が冷麦をゆでていた。
「お帰りィ。もうすぐ出来るどごだァ。」
母の後ろ姿に「ただいま」と言うと、憲治は居間で本のページを開いた。父の書斎から持ち出した、ユング関連の学術書だ。1ページ目に目を通し始めると、ほどなくして父が仕事を終えて帰ってきた。
「ほい、ただいまだよ。」
そろそろ50にならんとしている父は、やけに軽快に家に入ってきた。
黙って大学をやめたとき以来、憲治の心中には両親への呵責の念から、おぼろではあるが自ら「断絶」の二文字を思い浮かべながら過ごしてきた。
「お帰りィ。もうすぐ出来るどごだァ。」
母の後ろ姿に「ただいま」と言うと、憲治は居間で本のページを開いた。父の書斎から持ち出した、ユング関連の学術書だ。1ページ目に目を通し始めると、ほどなくして父が仕事を終えて帰ってきた。
「ほい、ただいまだよ。」
そろそろ50にならんとしている父は、やけに軽快に家に入ってきた。
黙って大学をやめたとき以来、憲治の心中には両親への呵責の念から、おぼろではあるが自ら「断絶」の二文字を思い浮かべながら過ごしてきた。