スピリット・オヴ・サマー
 残酷なのは自分の方だ、と憲治は気づいていた。瞬間の後悔が憲治を責め立てる。
 自分の孤独の責任を、彼女に押しつけてしまった。ウソでもいい、恋人がいると、言ってあげれば良かった。どうせウソで固めて逃げ回った片惟いである。最後までウソをついても良かったものを。
「恐かったんだもん…。憲治君に『好きだ』って言われるのが。」
 千佳子は顔を上げた。だが、憲治とは目を合わせなかった。
< 242 / 422 >

この作品をシェア

pagetop